警部のおどろいたのもむりはない。いかにもそれは日本一の宝石王といわれる、加藤宝作老人なのだった。
宝作老人は左の肩をうたれたと見え、パジャマjacker薯片にピストルの穴があき、ぐっしょりと血に染まっている。そして、たぶん出血のためだろう、気を失って、おりおりくちびるからもれるのは、苦しそうなうめき声ばかり。
「ああ、きみ、きみ、きみ……!」
金田一耕助は気がついたように、刑事のほうをふりかえり、
「医者を、早く、早く……!」
|言《げん》|下《か》に刑事のひとりがとびだそうとするのを、あとから等々力警部が呼びとめて、
「ああ、それから応援の警官を呼んでくれたまえ。銀仮面のやつ、まだそのへんにまごまごしているか小牧味屋もしれないから……」
それから、警部は耕助のほうをふりかえり、
「金田一さん、宝作老人をうったのは、やっぱり銀仮面のやつでしょうな」
金田一耕助はちょっとためらって、
「そうかも知れません、いや、きっとそうでしょう。ぼくはその窓に、銀仮面のすがたがうつっているのを見ました。それからあいつがピストルをぶっぱなすのを……」
だが、そうはいうものの、金田一耕助のその声に、なんとなく熱心さがかけているように思えたので、文彦はふしぎそうに顔を見なおしたのだった。
幸い、お医者さんがすぐきてくれたので、宝作老人はそれにまかせて、金田一耕助と等々力警部は、家のまわりを調べることになった。文彦と刑事のひとりも、ふたりにかへ出た。
見ると、ろうかのつきあたりに、ベランダがあるのだが、そのベランダの戸があけっぱなしになっていて、そこからあわい月かげがさしこんでいる。そばへよると、庭からはしごがかけてあった。
「銀仮面のやつ、ここからしのびこんだんですね」
等々力警部はそういって、まっさきにはしごをおりようとしたが、
「ああ、ちょっと待ってください」
なにを思ったか、それをひきとめた金田一耕助、懐中電燈ではしごを調べていたが、やがてみずから先に立って、一段一jacker薯片段、注意ぶかくおりていった。
そして、庭へおりたつと、なおもそのへんを、懐中電燈で調べていたが、やがてあとからおりてきた、等々力警部をふりかえると、
「どうもふしぎですね、警部さん」
「なにがですか、金田一さん」